薬剤師国家試験には、薬学の知識がなくても解けるものがあります。
本記事では、私が国家試験の勉強をしている中で出会った、面白い問題を紹介したいと思います。
第99回薬剤師国家試験 問236〜237
まずは問題をご覧ください。
10月のある夕方、薬局を男性が訪れた。その日、友人から初物のカキ(牡蠣)をもらったため、昼に友人や家族と自宅の居間で、生ガキと、炭火で焼きながら焼ガキを食したとのこと。全員が頭痛、嘔吐及びめまいを起こしたが、別室に移って休んだところ、少し落ち着いたとのことであった。
問236 (衛生)
これらの症状を引き起こした原因として最も可能性が高いのはどれか。1つ選べ。1 腸炎ビブリオ
第99回薬剤師国家試験 問236より
2 ノロウイルス
3 腸管出血性大腸菌
4 二酸化窒素
5 一酸化炭素
問237 (実務)
この男性に対する薬剤師の対応として適切なのはどれか。2つ選べ。1 次亜塩素酸ナトリウムを含む消毒液で調理器具を消毒することを勧めた。
第99回薬剤師国家試験 問237より
2 消毒用エタノールで調理器具を消毒することを勧めた。
3 調理中は部屋の換気を十分に行うことを勧めた。
4 一般用医薬品の胃腸薬を勧めた。
5 医療機関への受診を勧めた。
みなさん答えはわかるでしょうか。
この問題の答え、実はこうです。
問236:5
問237:3, 5
あってましたでしょうか。
なんで「ノロウイルス」じゃないのよ!
そう、答えは「ノロウイルス」ではないんです。
そして、問236を誤って2のノロウイルスと回答すると、自ずと問237も1, 5とミスリードされ、立て続けに2問も落としてしまう、という構図になっています。
私はこの年の受験生ではなかったですが、実際にこの年を受けていた場合は、恐らく引っ掛かっていたように思います。
実際の解法
逆に、薬学の勉強をしたことがない人でも、今回の問題の答えにたどり着くことが出来ると思います。
問題文をよく読むと、「別室に移って休んだところ、少し落ち着いた」とあります。
ノロウイルスによる感染性胃腸炎だった場合、別室に移って休んだくらいでは収まりません。
また、少し専門的な話にはなってしまいますが、ノロウイルス体内に入った後、ヒトの腸管で増殖し、胃の運動神経の低下・麻痺が伴うために主に「腹痛・下痢・吐き気・嘔吐」の症状を引き起こします。その潜伏期間(体内に病原体が侵入してから、症状が出るまでの期間)は24〜48時間です。すなわち、お昼に食べた牡蠣が当たるとしたら、夕方では少し早すぎる気がします。
(ノロウイルスに関する詳細は厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」をご参照ください。)
リンク先:ノロウイルスに関するQ&A|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
このことから、原因がノロウイルスであることが否定できます。
また、室内で炭火を用いていることから室内では一酸化炭素が発生していると考えられます。
これらのことから、頭痛、嘔吐及びめまいの原因は「一酸化炭素」である、という答えにたどり着くことが出来ます。
めちゃくちゃ引っ掛け問題じゃないか!
選択肢2までしか読んでなくて、5に「一酸化炭素」があることすら知らなかったわ!
問題は落ち着いてよく読もう・・・。
選択肢は最後まで見よう・・・。
まとめ
この問題は薬学生の間ではかなり有名で、一般の方でも知っている方はいらっしゃると思います。
それくらい、当日も多くの受験生が引っ掛かり、インパクトのある問題だったと思います。
問題をよく読むこと、そして先入観にとらわれないことが重要だということを学ばせてもらういい問題であったように思います。
それではまた!
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